エゾウコギの研究報告

研究報告者

藤川 隆彦

鈴鹿医療科学大学
薬学部 教授

藤川 隆彦 医学博士

自律神経を調節するエゾウコギ
(2016年日本薬学会第136年会にて発表)

自律神経のはたらき

自律神経は、交感神経と副交感神経に別れ、自分の意思ではコントロールできない心臓、消化器官、血管等の働きをコントロールしています(図1)。過度のストレス状態が続くと自律神経の働き(交感神経と副交感神経のバランス)が乱れ、体や心の不調につながります(図2)。

図1.自律神経(交感神経と副交感神経)のはたらき

図2.自律神経のバランスの乱れと身体の不調

試験方法

ラットに、エゾウコギエキス5%配合飼料を1週間自由摂取(対照群のラット には基本飼料)させた後、試験当日、個別で飼育していた対照群ラットには水、エゾウコギ群ラットには5%エゾウコギエキス水溶液1mLを経口投与し、新しい飼育ケージ(新規環境)に2匹のラットを3時間同居させました。同居1時間前、同居直後(0時間)、同居0.5、1、2、3時間後に自律神経の働きを調べました。

結果と考察

新規環境下での別個体同居は、ラットにとって大きなストレスとなります。対照群のラットでは、ストレス環境に置かれたことで交感神経活動が亢進し、副交感神経活動が低下しましたが、エゾウコギ群では、同居直後から3時間後まで、対照群と比較して交感神経活動(LFnu*)の亢進が有意に抑制され、副交感神経活動(HFnu*)の低下が有意に抑制されました(図3、4)。新しい場所での見知らぬラットとの3時間同居は、不安や緊張を誘導していることが自律神経活動の変化からもわかります。不安や緊張を感じたラットでは、自律神経系のうち交感神経の活動が亢進しますが、エゾウコギはその亢進を抑制し、さらに副交感神経活動の低下も抑制しました。本試験の結果から、エゾウコギは、新しい環境や対人関係における不安・緊張を伴ったストレスに対し、自律神経系のバランスを調節することにより適応力を高める有用な食品であることが示唆されました。

図3.エゾウコギ投与における新規環境下・同居時の交感神経活動への影響

肺腫瘍の成長阻害結果

図4.エゾウコギ投与における新規環境下・同居時の副交感神経活動への影響

肺腫瘍の成長阻害結果

【用語説明】

*LFnu:心電図の周波数解析から求められる交感神経活動の指標
*HFnu:心電図の周波数解析から求められる副交感神経活動の指標