クロレラの研究報告
クロレラ・機能性植物研究会 会長
東北大学 未来科学技術共同研究センター(NICHe) 教授
宮澤 陽夫 農学博士
老年性認知症の進行を予防する可能性
(2013年「Journal of Oleo Science」に掲載)
脳細胞へ酸素を運ぶ
アルツハイマー病(AD)のような老年性認知症患者では、赤血球膜に過酸化リン脂質の異常な蓄積が見られます。これは赤血球が老化した状態と認識されており、老化した赤血球では脳細胞への酸素の移行が低下するため認知症の進行に関与していると推測されます。クロレラにはその過酸化リン脂質の蓄積を減らす作用があることがわかりました。
認知症者では老化赤血球が多い
AD患者では、健常者と比べて赤血球中の過酸化リン脂質が増加していることが報告されています。
認知機能低下の進行を調べるための検査としてミニメンタルステート検査 (Mini-Mental State Examination,MMSE) があります。30点満点で、27点以下では軽度認知障害(MCI)が疑われ、23点以下では認知症の疑いがあるとされます。
MMSEスコアは、ADの症状の進行によって低下し、逆に赤血球中の過酸化リン脂質は増加していきます。
その作用成分は『ルテイン』
クロレラには赤血球膜リン脂質の酸化に対して強い抗酸化作用を示すルテインが豊富に含まれています。含まれているだけでなく、体の中で機能を示すことがわかりました。
赤血球に必要な成分ルテインと加齢に伴い増加する過酸化リン脂質
赤血球に必要な成分を増やす
赤血球ルテイン濃度
加齢に伴い増加する過酸化リン脂質を減らす
赤血球中過酸化リン脂質濃度
【方法】
健康な中高齢男女12名(年齢50-68歳)を対象にクロレラ群およびプラセボ群(1群6名)の無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験を行いました。被験者には、クロレラまたはプラセボ錠のどちらかを1日40粒(朝夕20粒ずつ)、8週間摂取してもらいました。クロレラの効果を確認するため、摂取前、4週間後および8週間後に赤血球中のルテイン濃度と過酸化リン脂質濃度を測定しました。
【結果】
クロレラ群では、摂取 8 週間後において摂取前との比較から、赤血球中のルテインが約 4.6 倍(49.7pmol/mL から 230.7pmol/mL)に増加し、赤血球中の過酸化リン脂質は、11.9pmol/mL から5.0pmol/mL へと有意な低下が認められました(P<0.05)。プラセボ群では、赤血球中のルテイン濃度および過酸化リン脂質濃度とも有意な変化は認められませんでした。また、クロレラ摂取による有害事象は認められませんでした。