クロレラの研究報告

研究報告者

クロレラ・機能性植物研究会 理事
流通経済大学スポーツ健康科学部

大槻 毅 教授

クロレラ摂取による有酸素性能力の向上

(Umemoto S and Otsuki T. Chlorella-derived multicomponent supplementation increases aerobic endurance capacity in young individuals. Journal of Clinical Biochemistry and Nutrition 2014, Vo.55, No.2.)

有酸素性能力と健康

有酸素性能力は全身持久力とも呼ばれ、陸上競技の中長距離走やマラソン、サッカー等のスポーツ選手において重要な能力です。また、中高年の健康づくりにも有酸素性能力は重要で、加齢とともに有酸素性能力が低下すると疲労を感じやすくなりますし、生活習慣病や心血管系疾患の罹患率や死亡率と関連することも明らかにされています[引用1,2]。
有酸素性能力(=全身持久力)の代表的な指標に「最大酸素摂取量」があります。最大酸素摂取量とは「1分間に利用できる酸素の最大量」のことで、体重1kgあたりの値(mL/kg/分)で示されます。体内でのエネルギー産生には酸素が使われますが、酸素の利用能力が高いほど多くのエネルギーを産生できるので、疲れにくく、運動を長く続けることができます。
「健康づくりのための身体活動基準2013(厚生労働省)」では、性・年代別の基準値を定め(表1)、「適切な運動習慣を確立させる等して体力を向上させるような取組が必要である。」と説明しています。

表1.性・年齢別の最大酸素摂取量の基準

年齢 18~39歳 40~59歳 60~69歳
男性 39 mL/kg/分 35 mL/kg/分 32 mL/kg/分
女性 33 mL/kg/分 30 mL/kg/分 26 mL/kg/分

クロレラについて、マウスによる動物試験において、14日間の摂取により対照群と比較して遊泳時間が延長するという報告があることから、本試験で、クロレラ摂取による最大酸素摂取量への影響を検証しました。

試験方法

健康な男性7名、女性3名の合計10名(21±0.3歳)を対象に、クロスオーバーの二重盲検プラセボ対照試験を実施しました。4週間のプラセボ摂取試験とクロレラ摂取試験を6週間以上の間隔を空けて実施ました。各対象者の飲用順は無作為に決定し、対象者は摂取期間中、1日30錠(15錠×2回、朝食・夕食時)を摂取しました。飲用前後に、自転車エルゴメータを用いて疲労困憊に至るまでの最大運動負荷テストを行い、呼気ガス分析装置により一呼吸毎(breath-by-breath法)の酸素摂取量と二酸化炭素排出量の測定を行いました。
なお、本試験は、流通経済大学倫理審査委員会の承認を得て実施されました。

結果と考察

摂取前においては、プラセボ群とクロレラ群で最大酸素摂取量を含めて、有意差のある指標は認められませんでした。摂取後、プラセボ群では最大酸素摂取量に有意な変化は認められず、クロレラ群では有意な増加が認められました(図1)。
本試験の結果、4週間のクロレラ摂取により運動負荷時の最大酸素摂取量が増大したことから、クロレラは、全身持久力を高める食品であることが示唆されました。

肺腫瘍の成長阻害結果
肺腫瘍の成長阻害結果

図1.クロレラ摂取前後の最大酸素摂取量と最大酸素摂取量の変化量

〇マーカーは、平均値±標準誤差を示す。△マーカーは、飲用前後の運動負荷テストにおいて、いずれも最大運動に達した対象者のデータ、□マーカーは飲用後の運動負荷テストにおいて、最大運動に達しなかった対象者のデータを示す。

引用1.Kodama S, et al. Cardiorespiratory fitness as a quantitative predictor of all-cause mortality and cardiovascular events in healthy men and women: a meta-analysis. JAMA. 2009, 301(19): 2024-35.

引用2.Carnethon MR, et al. Prevalence and cardiovascular disease correlates of low cardiorespiratory fitness in adolescents and adults. JAMA. 2005, 294(23): 2981-8.