アガリクスの研究報告
(一社)菌類薬理研究所 所長
伊藤 均 医学博士・薬学博士
肺腫瘍の増殖を阻害する作用
(2012年「医学と生物学」に掲載)
アガリクスの主要な成分「β-(1→6)-D-グルカンタンパク複合体」
アガリクス(Agaricus blazei Murrill,和名 ヒメマツタケ)から発見された「β-(1→6)-D-グルカンタンパク複合体」は抗腫瘍効果などで高い薬理作用を示すことが明らかになっています。また、β-(1→6)主鎖の構造をもつヒメマツタケの多糖体は、多くのタンパク質と結合し、消化管から体内へ吸収される優れた多糖体であることがわかっています。
β-(1→6)-D-グルカンタンパク複合体の作用メカニズムについては未知の部分が多く存在しています。
そこで、β-(1→6)-D-グルカンタンパク複合体を摂取することで、肺腫瘍の増殖そして転移と腫瘍細胞に栄養素を送り届ける血管形成能力(血管新生)に与える影響を解明する目的でマウス試験を行いました。
試験方法
【方法】
肺腫瘍細胞を腿に移植したマウスにβ-(1→6)-D-グルカンタンパク複合体を21日間、10 mg/kg, 50 mg/kg, 100mg/kgの用量で与えるグループに分けて肺腫瘍の増殖と腫瘍の転移数を評価しました。さらに、同じ肺腫瘍細胞を背中に移植したマウスにβ-(1→6)-D-グルカンタンパク複合体を15日間、20 mg/kg, 100mg/kgの用量で与えるグループに分けて腫瘍細胞の血管新生に与える影響を評価(マトリゲルプラグアッセイによる)しました。なお、β-(1→6)-D-グルカンタンパク複合体は毎日、朝と夕に経口で与えました。
【結果】
β-(1→6)-D-グルカンタンパク複合体の投与は肺腫瘍の増殖と転移を阻害すること(図1, 2)、そのメカニズムの一つとして腫瘍細胞の血管形成因子の作用を阻害していること(図3)が認められました。そして、これら作用はβ-(1→6)-D-グルカンタンパク複合体の濃度依存的に示されました。